はじめに
出生後、就学前に受ける乳幼児健診に不安が抱くパパさん、ママさんが多いではないでしょうか。乳幼児健診では「いつから」「どんな検査をするの?」など多くの悩みがあると思います。
私は医療機関で務めるリハビリ専門職として、これまで乳幼児健診で5,000人以上の乳幼児や幼児と関わり、主に運動の発達を確認し、パパさんママさんに指導してきました。
この記事では、パパさんママさんが乳幼児健診について、以下の内容が分かります。
- 「乳幼児健診ってどんなことを検査するの?」
- 「いつ受けなければいけないの?」
- 「費用はいくらなの?」
また、各健診でパパさんやママさんからよくある質問についても解説していきます。記事を読めばパパさん、ママさんが普段抱えている不安も軽減することでしょう。
では、早速いってみましょう。
乳幼児健診とは
正式には「乳幼児健康診査」と言います。母子保健法に基づき赤ちゃんや幼児の成長や発育の状態を定期的に確認し、健康を維持するために行われる健康診断です。
発育状況や栄養状況の確認を以下の専門職の目線からチェックを行います。
- 医師
- 歯科医師
- 保健師
- 助産師
- 栄養士
- リハビリ専門職(理学療法士、作業療法士) など
これら専門職が問診・視診等を行い助言します。
乳幼児健診っていつ受けるの?
健診の目安
乳幼児健診は自治体にもよりますが、一般的に以下の日程で受けられます。
健康診査名 | 健診内容 | 対象年齢 |
---|---|---|
1カ月児健康診査 | 身体測定・診察・育児相談 | 1カ月児 |
3~4カ月児健康診査 | 身体測定・診察・育児相談 | 3~4カ月児 |
6~7カ月児健康診査 | 身体測定・診察・育児相談 | 6~7カ月児 |
9~10カ月児健康診査 | 身体測定・診察・育児相談 | 9~10カ月児 |
1歳6カ月児健康診査 ※法定健診 | 身体測定・内科健診 歯科検診・育児相談 | 1歳6カ月~2歳未満児 |
3歳児健康診査 ※法定健診 | 身体測定・内科健診 歯科検診・尿検査 育児相談 | 3歳1か月~4歳未満児 |
自治体からは、対象となる乳幼児のご家族に以下の内容で確認できます。
- 郵送でご自宅に通知(通知時期は、1週間前~2か月前と自治体によっても大きく異なります)
- 健診時に次回の健診案内のチラシを渡される
- 自治体のホームページや広報誌
健診の会場
乳幼児健診の会場は、主に以下の2つです。
- 自治体の保健センター等で行う集団健診
- 自治体から委託をうけた医療機関で個別健診
※自治体によっては無料診断券を配布するところもあります
法定健診のほとんどは集団健診で実施されていますが、乳児期の健診では個別健診の割合が比較的高くなってきています。対象時期や診察方法が集団健診なのか個別健診なのか、市町村により様々のため事前に調べておきましょう。
通院している病院で健診を済ませた場合、市の集団健診は受診しなくてもよいですか?
出生後から病院で乳幼児健診を受診している場合、自治体は知らないのがほとんどです。
「1歳6か月児健診から自治体で受けたい」といったように自治体に連絡していただくと健診時にスムーズになります。
乳幼児健診って何するの?
乳幼児健診は自治体や病院・産院によって健診内容は多少異なあります。先述した健診内容以外ににどうのような確認事項や指導内容があるか説明します。
1カ月児健康診査
1カ月児健診では、以下の項目について確認や指導を受けます。
- 日常の赤ちゃんの様子(授乳方法や授乳量、睡眠量、排泄状況など)
- へその乾き具合や黄疸の有無
- 発育性股関節形成不全の有無※
- 心雑音の有無
- モロー反射など発達状況の確認
母乳の場合、ビタミンK欠乏性出血症による頭蓋内出血を予防するために、ビタミンK2シロップを投与することもあります。病院・産院によっては、出生後に受けた先天性代謝異常等検査(新生児マススクリーニング)・新生児聴覚検査の結果説明がある場合もあります。
※発育性股関節形成不全(先天性股関節脱臼)…脚の付け根の関節が外れる病気です。
詳細URL:日本整形外科学会、日本小児整形外科学会 パンフレット「赤ちゃんが股関節脱臼にならないように注意しましょう」
3~4カ月児健康診査
3~4カ月児健診では、以下の項目について確認や指導を受けます。
- 運動の発達(首がすわっているか、追視・原始反射の様子)
- 股関節(股関節のひらきに左右差はないか)
- 筋性斜頸※や発育性股関節形成不全の有無
- 感覚機能刺激への反応(笑い声・発声・目つきや目の動き・音や声かけへ反応するかなど)
- 栄養状態
- 生活リズムや母の心身状態、育児環境などの確認や育児相談 など
※筋性斜頸…常に顔を左右どちらかに向けて首をかしげた状態
詳細URL:日本整形外科学会ホームページ「斜頸」
1ヶ月健診では、身体の発育を中心に見ますが、3~4ヶ月健診では発育に加え、発達面などもチェックします。
母乳栄養のみですが、混合栄養にしなくてもいいですか?
現在、母乳栄養のみですが、混合栄養にしなくてもいいですか?
基本的には自立哺乳といって、「好きな時に好きなだけ」飲ませてあげてください。
実際には赤ちゃんの哺乳量はかなり個人差があります。一般的に「ゴクッゴクッ」と飲んでいる音が聞こえていれば、十分な量の母乳が飲めていることが多いようです。あとは、母子手帳の成長曲線に沿って体重が順調に増えていれば、まず問題ありません。
6~7カ月児健康診査
6~7カ月児健診では、以下の項目について確認や指導をうけます。。
- からだの発育(乳歯の生え具合)
- 運動の発達(首が座っているか、おすわり、寝返りができるかなど)
- 精神の発達(パパさんママさんの声かけに対する反応、笑い声・発声・視線など)
- 先天性の異常の有無
- ミルクや離乳食の量
- 排泄や排尿の回数 など
この頃からママさんからもらった免疫が徐々に低下します。赤ちゃん自身の免疫力も未熟ですので、感染症についての指導が行われることもあります。
また、生後6〜7ヶ月の赤ちゃんは、成長と発達の面でさまざまな重要な変化が起きる時期です。早めに問題を把握し、対応ができるように受診をおススメします。
お座りが補助できるイスは必要?
「お座り」ができる時期ですが、お座りができません。お座りが補助できるイスを使用したほうがよろしいでしょうか?
「お座り」を補助するイスを多用すると、「お座り」に必要な筋力が育ちません。そこでオススメが「ずりばい」で移動を促すことです。
え?なぜ「ずりばい」がオススメなの?
「ずりばい」は「お座り」に必要な頭を支える「首すわりのチカラ」、上半身を支える「腹筋と背筋の筋力」の向上させる効果もあります。
9~10カ月児健康診査
9~10カ月児健診では、以下の項目について確認や指導をうけます。
- 運動の発達(ハイハイ、つかまり立ち、指の動き)
- 精神の発達(呼びかけへの反応・人見知りをするか・なん語の発生)
- 歯の生え具合
- 離乳食の様子
- 視覚や反応(斜視はないか、瞳が白や緑黄色に見えないか)
- 聴覚(小さな声への反応があるか)
- 予防接種の進み具合
この時期に、視覚や聴覚などの先天的な病気が見つかることもあります。早期発見と早期治療は非常に重要です。任意ですがしっかり受診しましょう。
また、この時期から離乳食が始まり、栄養士から離乳食指導が受けられます。初めて離乳食をつくるご家族は、ここでしっかり理解を深めておきましょう。
歩行器の多用は歩く上達につながらない?
実家に歩行器があるのですが、歩行器に載せると歩くことが上達しますか?
「なかなか歩けない」と理由から、歩行器に頼りがちだと歩くために必要な筋力が育ちません。
では、お家で何をさせればよろしいですか?
普段の移動が「はいはい」であれば、どんどん「はいはい」を促してください。周りの子が歩き出しはじめて、焦る気持ちもわかりますが気にすることはありません。「はいはい」することで、「歩いて時に転びにくくなるための筋力」だけでなく「指先の器用さ」も向上します。
1歳6カ月児健康診査
1歳6カ月児健康診査では、以下の項目について確認や指導をうけます。
- 運動の発達(一人歩きの様子、物がつかめるか)
- 精神の発達(赤ちゃんが意味を含んだ動作を理解し、使えているかどうか)
- 視覚や反応(斜視はないか、瞳が白や緑黄色に見えないか)
- 障害の有無(心音や皮膚、四肢運動障害、言語障害、精神障害)
- 聴覚(名前を呼ばれると振り向くか)
- 歯科健診(歯の生え具合や、舌の動き、虫歯があるかどうか)
- 予防接種の進み具合 など
この時期になると歯の生え方や本数、虫歯がないかどうかなどもチェックし、場合によっては歯の磨き方の指導を受けられます。
また、1歳6カ月健診では、しゃべれることばの数の確認のみならず、親子関係、視線のあい方、まねができるかなど、コミュニケーションの基礎となる行動を確認しています。
ことばの発達を促すコツは?
ことばの検査で「わんわんはどれ?」と尋ねられた際、うちの子はネコを指でさしたのですが大丈夫でしょうか?
このような場合、質問に答えるといったコミュニケーションの基礎は育っていると考えられます。しかし、子どものあまたの中で「わんわん」は「イヌ」ではなく、「わんわん」は「動物」と認識していることも考えられます。
では、お家で何かできることはありますか?
子どもがキャッキャッと声を出して喜ぶ反応が出るような体を使った遊びはオススメです。
たとえば、「たかい、たかーい」としゃべり高い高いをする。「こちょこちょこちょ」としゃべりすぐるなどですね。
あと絵本の読み聞かせもいいですね。「イヌ、ワンワン」といって指でさします。目や耳からの複数の情報が入ることにより、理解の正確性が向上します。
3歳児健康診査
3歳児健康診査では、以下の項目について確認や指導をうけます。
- 運動の発達(一人歩きの様子)
- 精神の発達(赤ちゃんが意味を含んだ動作を理解し、使えているかどうかなど)
- 言語の発達(3つのことばをつないで話せるか)
- 社会性の発達(集団行動での様子)
- 視覚や反応(斜視はないか、瞳が白や緑黄色に見えないか)
- 聴覚(名前を呼ばれると振り向くか)
- 歯科健診(歯の生え具合や、舌の動き、虫歯があるかどうか)
- 疾病の及び異常の有無(脊柱や胸郭、皮膚、眼、耳、鼻及び咽頭、歯、口腔など) など
3歳児健診は就学前の最後の法定健診となります。健診終了後も不安が残る場合でも相談にのってくれます。また、自治体によっては、「5歳児健診」を実施しているところもあります。
3歳児健診でひっかかる割合は、約27%程度と言われています。しかし、健診でひっかかったからといって、必ずしも発達障害やそのほかの障害があるわけではありません。早期に問題を発見し、適切な処置や支援をすることで、子どもの健やかな成長を促すことができます。
知的障害と自閉症スペクトラム症
2~3歳になっても言葉がでなかったり、遅れていたりする場合は発達障害にどのようなものがありますか?
2~3歳になっても言葉が出なかったり、遅れていたりする場合には、知的障害(知的発達症)や自閉スペクトラム症(ASD)などの発達障害の可能性もあります。
健診の時だけでは判断ができないことが多いため、医療機関での診断をオススメします。
自閉スペクトラム症(ASD)とは…言葉や、言葉以外の方法、例えば、表情、視線、身振りなどから相手の考えていることを読み取ったり、自分の考えを伝えたりすることが不得手である、特定のことに強い興味や関心を持っていたり、こだわり行動があるといったことによって特徴付けられます。
参考URL:NCNP病院(国立精神・神経医療研究センター)
乳幼児健診の費用はいくら?
「1歳6か月児健康診査」と「3歳児健康診査」は母子保健法で定められており、無料で受けられます。
一方、「1か月健診」「3〜4か月健診」「6〜7か月健診」「9〜10か月健診」「1歳健診」などは任意健診となり自費で受診が必要です。しかし、自治体によっては無料、もしくは一部負担してくれる場合があります。 自己負担は以下のケースです。
- 自治体の指定期間外に任意で乳幼児健診を受ける場合。
- 任意の乳幼児健診を受ける場合。
これらでかかる費用は医療機関や受診内容によって異なりますが、3,000~10,000円となります。
ただし、注意点もあります。
病気ではないため保険適用外となるため助成の対象になりません。
病気を治療する物ではないので、原則として医療費控除の対象とはなりません。
薬の処方など保険診療を受けた場合は、健診とは別に費用が掛かります。
まずは、自身の自治体のホームページを確認し、わからなければ連絡しましょう。
乳幼児健診よくある質問【Q&A】
どこで受けられるの?
基本、以下のような場所で受けられます。
- 地域の保健所や市町村保健センターなどに集まって行う「集団健診」
- かかりつけの小児科医の元で受ける「個別健診」
個別健診を受ける場合は市区町村から事前に配布された受診票が必要になります。
健診が義務付けられている1歳6カ月児健診と3歳児健診は集団健診で実施され、それ以外は個別健診で実施されるケースが多いですが、自治体によって受診方法は異なるため事前に確認しておきましょう。
必ず受けないとだめですか?受けないとどうなりますか?
公費負担の任意健診を受けなくても、保護者は罪に問われません。受診しない場合は、自治体の職員が健康状態を見るために、自宅を訪問することがあります。子供の健康状態や発達に問題がないかを確認されるでしょう。
どのような服装でいけばいいの?
診察や測定の際にはおむつ1枚になるので、着脱しやすい前開きタイプがオススメです。寒い季節や気温が低いときは防寒具を忘れずに。
あと、受診に来られる親御さんの中にはたくさんの荷物を抱えてこられる方いらっしゃいます。なるべくなら両手がフリーになるようリュックがオススメです。私が健診会場でママさんが良く使用しているのが「anelloのリュック」です。このリュックは妻も利用しおり、手ごろな価格でオススメです。
体調が悪いときどうすればいい?
健診の前日や当日、体調を崩してしまうこともあるかもしれません。お子さま・保護者の方が体調を崩してしまった場合は、無理に外出すると体調が悪化する可能性や、他の方に伝染ってしまう可能性もあるため、健診は見合わせるようにしましょう。
乳幼児健診の日程は調整が可能です。受診予定の病院や市区町村の担当課に連絡をし、健診日を調整してもらいましょう。
まとめ
近年、パパさんママさんが一緒に来られるケースも増えてきましたね。
乳幼児健診の内容を知ったうえで受診することで、子どもの発達に大いに役立ち、パパさん、ママさんの不安も軽減することでしょう。また、法定受診はもちろん、自治体が実施する法定外の乳幼児健診もすすんで受診しましょう。多職種の専門職から正しい知識をみにつけ、子どもが健やかに発育を促しましょう。
少しでも不安があれば必ず自治体や専門職に相談しましょう。